胡蝶の夢四

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令和7年5月12日

 司馬遼太郎著

巨大な組織・江戸幕府が崩壊してゆくこの激動期に、
時代が求める〝蘭学〟という鋭いメスで身分社会を切り裂いていった男たち。


瓦解する幕府の海陸軍軍医総裁となった松本良順は、官軍の来襲とともに江戸を脱出し会津に向かう。他方、ともにポンペ医学を学んだ関寛斎も、官軍野戦病院長として会津に進軍し良順と対峙する。そして、激動のなかで何らなすところなく死んでゆく伊之助。徳川政権の崩壊を、権力者ではなく、蘭学という時代を先取りした学問を学んだ若者たちの眼を通して重層的に映し出した歴史長編。

【著者の言葉】
何かを見たいというのが、私の創作の唯一の動機かもしれません。
見たいという衝動と、見たということについての驚きだけで、小説は出来るものでしょうか。ただし自分自身をそんな反問でふりかえったりしないようにしています。仄かながらも見えたかもしれないという驚きを一個ずつ懐(ふとこ)ろにしまいこみ、取りだすときにもう一度別な質を感じつつ、やがて一個一個、手撚(てよ)りの紐に通してつらね、再度新たなものとして感じたいと思いつつ書きました。(第四巻「伊之助の町で」)


【目次】
西の風
江戸の正月
西軍来る
佐渡から
阿波から
江戸の良順
脱走
横浜
惨風
西風東雨
東京
陸別

伊之助の町で―あとがきのかわりに
解説:粕谷一希

司馬遼太郎(1923-1996)
大阪市生れ。大阪外語学校蒙古語科卒。産経新聞文化部に勤めていた1960(昭和35)年、『梟の城』で直木賞受賞。以後、歴史小説を一新する話題作を続々と発表。1966年に『竜馬がゆく』『国盗り物語』で菊池寛賞を受賞したのを始め、数々の賞を受賞。1993(平成5)年には文化勲章を受章。“司馬史観”とよばれる自在で明晰な歴史の見方が絶大な信頼をあつめるなか、1971年開始の『街道をゆく』などの連載半ばにして急逝。享年72。『司馬遼太郎全集』(全68巻)がある。

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