土の記(上下)

日本書

高村薫著

 70歳過ぎの一人暮らしの男性の農家の話。水稲の生育や農作業、親戚、近所の人の話、そして彼の脳内の話が延々と続く。最後はびっくり。

 ラスト数瞬に茫然、愕然、絶叫! 現代人は無事、土に還れたのだろうか――。青葉アルコールと青葉アルデヒド、テルペン系化合物の混じった稲の匂いで鼻腔が膨らむ。一流メーカー勤務に見切をつけ妻の里に身を落着けた男は、今年の光合成の成果を測っていた。妻の不貞と死の謎、村人への違和感を飼い馴らす日々。その果てに、土になろうとした男を大異変が襲う。それでもこれを天命と呼ぶべきなのか……。

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