誰が科学を殺すのか

日本書

令和2年(2020)2月22日

「誰が科学を殺すのか」~科学技術立国「崩壊」の衝撃~
毎日新聞「幻の科学技術立国」取材班著

 日本の科学の凋落が言われて久しい。論文数ではアメリカ、中国の後塵を拝しており、かつてのお家芸だった企業による発明やイノベーションも海外企業に敗北し続けている。海外では当たり前のベンチャー企業も全然育っていない。日本ではノーベル賞は近年受賞しているが、いずれも昭和の時代の大学改革前の基礎科学研究が充実していた時代の昔の人々が受賞しているだけである。個人的には、国立大学や試験研究機関の法人化が主要な要因だと思っていたが、この本を読んで改めてそのとおりであり、他にも複合的な要因がからんでいることがよくわかり、目からウロコであった。このままでは日本の科学技術と産業が危うくなる。
 科学技術を進めるうえで、研究者が自由な発想と潤沢な研究資金のもとで、基礎研究をすることは極めて重要だが、この失われた30年で逆になっている。過去の成功にしがみつき、新しいことへの挑戦に慎重になる日本の大企業の風土も問題であるが、なによりも、小泉・竹中時代から進められてきた新自由主義、大企業→内閣府主導政治の下で、資金の選択と集中、法人化による行政のコントロールによる科学技術政策が一番の原因である。政府予算は各省庁が科学研究費を持っていたのが、内閣府に集められ、大企業の御意見を聞いて内閣府主導の「やらせ公募」が横行している。ips細胞の山中教授の研究資金はく奪の話もこの一環だ。特に、国立大学は毎年減り続ける運営交付金で基礎的な研究資金が無くなり、企業等からの外部資金に頼らざるを得なくなった。科学技術研究費、通称科研費も選択と集中で、何をやるのか表面的に分からず、実用的ではない研究には当たらなくなった。こんな状況だから、自分の時代には花形だった博士課程に受かったポスドクは薄給で、任期が限られ、ブラックな職業になっている。こんな研究環境だから、優秀な研究が生まれるわけがない。

以下、アマゾンの内容紹介

――「選択と集中」、そして「効率」を求める政策が研究力を低下させ、大学を破壊する。日本の学術に輝きを取り戻す必読の書。

山極寿一・京都大学長

「平成・失われた30年」をもたらした「科学研究力の失墜」はなぜ起こったのか?
「選択と集中」という名の「新自由主義的政策」および「政治による介入」の真実、および疲弊した研究現場の実態とは?
毎日新聞科学環境部が渾身のスクープ!

《目次》
プロローグ
お家芸の「材料科学」で「周回遅れ」/論文数が示す「日本の転落」

第一章 企業の「失われた三〇年」
「産みの親」東芝はなぜ敗北したか/グーグルになれなかったNEC/日本企業が門前払いした「シーズ」/サムスン先行、ネット炎上/米軍が手を伸ばしたベンチャー「/オープンイノベーション」はなぜ進まないのか/国の研究に「ただ乗り」する自動車業界/GAFAが経済研究者を引き抜く理由/研究力を低下させる「就活」

第二章 「選択と集中」でゆがむ大学
内閣府主導プロジェクトで「やらせ公募」/相次ぐ成果の「誇大広告」/基礎研究はなぜ大切か/行き詰まるiPS細胞ストック事業/iPS細胞偏重によってひらく世界との差/調査は自腹、あえぐ地方大学「/国立大二〇校分」削られた予算/老朽化で屋根崩落/ 綱渡りだった「チバニアン」申請/研究する時間がない/強まる国の支配に反感/将来が見えない博士たち/ブラック化する研究現場

第三章 「改革病」の源流を探る
「科学技術族」長老の嘆き「/選択と集中」路線の始まり/旧科技庁と大蔵省の知られざるバトル「/寝耳に水」の交付金削減/強まる国の圧力、広がる大学間格差/東大はなぜ独り勝ちできたか

第四章 海外の潮流
中国の巨大望遠鏡「天眼」/「破格の待遇」で研究者引き抜き/ビッグデータを活用中国製医療AIの威力/プライバシーより利便性/中国論文数で世界トップに/米国最先端行く「フードテック」/若者の価値観変化を敏感に捉える米国/独創的な企業が育つ米国の仕組みと風土/研究者の自由な発想を重視するNIH/女性が働きやすい研究環境づくりが進むスウェーデン/女性管理職少ない日本

エピローグ
北極圏に中国が攻勢/政治に翻弄される科学ほか

「平成の国力衰退」をもたらした科学政策「大改悪」の驚くべき真実をあばく!政治、経営、そして科学の現場からの報告。

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