北海道農業と食の安全安心

令和2年(2020)1月23日

「北海道農業と食の安全安心」麻田信二 著

自分のかつての上司、とはいっても雲の上の存在だった副知事まで務められた麻田さんの本が出た(非売品)。
自分も末席ながら、関わっていた時代が重複しており、一気読みしてしまった。
麻田先輩のリーダシップにより、食の安心・安全条例、GM条例、クリーン・有機農業の推進、スローフード宣言、試験研究等々、現在の道農政の基礎となる素晴らしい取組が進められたが、いずれにしても激務の中、根っことなる哲学、思想を忘れず、北海道農業・農村のあるべき姿を思い描き、ブレないで進めたのだなと感じた。自分はまだまだどころか、スタートラインにも立っていないと痛感する。
そして、何よりも共感することは、定年帰農を薦めていることだ。自分も定年後はそうありたいと考えている。以下、参考となる文章を転載する。

【帯】
生きていくこと。それは農業を考えること
私たちが生きていく上で不可欠な食料、日本の自給率が37%まで低下するなど、食の安全・安心が問われている。今一度、北海道は食料自給率300%、原発を作らず、
有機農業に力を入れ、世界一流の福祉国家を築いているデンマークに学び、日本の食の安全・安心を牽引し、明るい未来の日本に向かって欲しい。

【個人的に感銘したセンテンス】
・北海道は、食料が十二分に自給でき、電力も自然再生エネルギーで将来は賄える日本に残された唯一のフロンティアでありながら、中央依存体質から抜け出すことができないまま、人口減少と地域の過疎化が進行し、厳しい状態になってきています。
・二宮尊徳の言葉に「遠くを計るものは富み、近くを計るものは貧す」とあるが、若い頃担当した転作事業では、転作作物栽培農家に800億円を超えるお金を道庁にある程度任せてらえれば、地域特定に応じたきめ細やかな対策を組み立て、市町村・農協とともにより良い北海道農業を築くことができるのではないかと思い、地方自治の重要性を考えさせられた。
・内村鑑三は、年に一冊は哲学書を読みなさい。それは想像力を豊かにする。そして政治の最大の責任は国民を飢えさせないこと。
・日本の農業は過保護であるとか、安い農産物を輸入した方が消費者が喜ぶとの認識を聞き、食料難を知らない国民が増加していることに強い危機感を感じた。
・アベノミクス農政は、農業・農村の重要性や果たす役割を軽んじる新自由主義者の意見が取り入れられ、食料自給率の向上や食料の安全保障とはほど遠いものになっている。
・国に依存し、国頼りの道行政を行っていれば、知事の責任は問われることはなく、その地位は安泰かもしれないが、それでは、北海道の真の発展はなく、多くの市町村が衰退していくこととなる。北海道は日本で唯一残されたフロンティアであり、食と環境と地域エネルギーでを持って大きく発展する余地が残されていると考える。・・・北海道独立の気概を持ち、全道の市町村とともに、北海道ならではの農業・農村政策を確立し、観光客に魅力のある食と観光のイベントに取り組むべきである。
・(試験場の整備について)米の品種改良の成果だけでも、上川農業試験場の移転整備に費やした予算以上のものが、真水の経済効果として毎年生まれるのであるから、これまでに果たしてきた農業試験場の大きな役割や食の安全保障を考えると、国が進める民間活力の導入に惑わされることなく北海道として農業試験場の整備充実を計画的に進めて欲しいと願っている。
・公的機関の役割は何かと考えると、長期的な視点に立って民間では取り組めない課題に取り組むことであり、有機農業の技術開発は公的機関が率先して行うべき。北海道あげて有機農業に取り組むならば、全て有機農業に転換することもできる。有機農業は道産農産物のブランド力を確たるものにし、食の安全・安心を求める消費者の強い支持と信頼を獲得することができる。
・100年後北海道が輝いているかは、アメリカのCSA、ニュージーランドの放牧酪農など世界の実例を参考にしながら、北海道の実情に合ったデンマークモデルをどう構築できるかにかかっている。農業条件に恵まれている北海道ができないはずはなく、自ら立ち上がる内から作るのか・従前同様他に依存し外から持ち込むのか、命ある有機農業か・従来型の興行的な科学農業か、どちらかを選ぶのか、私たちの想像力・構想力が試されている。

【先人に学ぶ】
(北大石塚名誉教授)
世界の大多数の経済学者が、農業生産物と工業製品を同一の土壌で論ずることは非合理的と考えている
農業の四つの義務は、1国民を飢えさせない、2安全な食料を提供する、3環境、特に土と水を保全する、4環境を汚染しないこと
(上杉鷹山)
成せば為る 成さねばならぬ何事も 成らぬは人の 為さぬなりけり
(二宮尊徳)
一円感、積小為大、不動尊、分度、推譲
道徳を忘れた経済は罪悪であり、経済を忘れた道徳は寝言である
(木村尚三郎)
農業の土壌の上に産業社会が成り立っている
農業体験を持たなくなれば、人々の心がバラバラになるだけでなく、土に根ざした文化が衰退する
五感を使って全身で考えることができなくなり、科学技術の発展が望めない
(渡部忠世)
農は万年を寿ぐ亀の如く、商工は千歳を祝う鶴に類す
(田中正造)
国土の尊厳を冒すものは必ず国を滅ぼす
(黒澤酉蔵)三愛精神(神を愛し、人を愛し、土を愛す)、健土健民、実学主義
(以上)

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